決算期が近づくと、多くの経営者様が税金の計算や申告準備に追われることと思います。しかし、決算は単に税金を計算するためだけのものではありません。会社の1年間の経営成績を確定し、財政状態を明らかにする重要なプロセスであり、次期に向けた経営戦略を立てるための貴重な機会でもあります。
特に決算前の期間は、適切な対策を講じることで、合法的な範囲で納税額を最適化し、会社のキャッシュフローを改善できる最後のチャンスです。決算が確定してしまってからでは、修正できないことがほとんどです。
「決算前に具体的に何をすればいいのか分からない」「節税対策をしたいが、何から手をつければいいか…」とお悩みの経営者様もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、中小企業の経営者様が決算前に必ずチェックすべき項目をリストアップし、今からでも間に合う黒字化・節税対策のポイントを分かりやすく解説します。
なぜ決算前の対策が重要なのか?
決算前の対策が重要な理由は主に以下の4点です。
- 決算確定後は修正が困難: 決算が確定し、申告書を提出してしまうと、後から利益額や納税額を調整することは基本的にできません。
- 節税策には期限がある: 多くの節税策は、決算日までに実行する必要があります(例:消耗品の購入、決算賞与の支給決定など)。
- 納税資金の準備ができる: 事前に利益を予測し、納税額をシミュレーションすることで、計画的に納税資金を準備できます。
- 決算書の「見栄え」を意識できる: 銀行融資などを検討している場合、決算書の数字(特に利益や自己資本比率)は重要な判断材料となります。決算前に状況を把握することで、必要な対策を検討できます。
【決算前チェックリスト①】利益・業績の最終確認
まずは、当期の利益がどのくらいになりそうか、正確に把握することがスタート地点です。
- □ 売上計上漏れはないか?
- 当期中に商品やサービスを提供し終えているものは、たとえ入金が翌期であっても、当期の売上として計上する必要があります(発生主義)。請求漏れや計上漏れがないか、受注履歴や納品書などを再確認しましょう。
- □ 在庫の棚卸は正確か?
- 期末時点での在庫(商品、製品、原材料、仕掛品など)の数量を確認し、評価額を計算します。
- 売れ残りや品質低下により価値が下がった在庫(不良在庫・滞留在庫)があれば、評価損を計上できる場合があります。処分の検討も必要です。
- □ 経費計上漏れはないか?
- 当期に発生した費用で、まだ計上していないものはないか確認しましょう。特に、請求書の到着が遅れているものや、クレジットカード払いで明細が未確定のものなどは漏れやすいポイントです。
- 従業員への未払給与や社会保険料なども該当します。
- □ 概算利益はいくらか?
- 上記のチェックを踏まえ、現時点での利益を試算し、決算までの期間の売上・費用を予測して、最終的な利益の着地点を見積もりましょう。これが節税対策や納税資金準備の基礎となります。
【決算前チェックリスト②】今からできる節税対策
概算利益が見えてきたら、次に検討すべきは節税対策です。ここでは、決算前に検討・実行可能な主な節税策をご紹介します。
- □ 未払費用を計上する
- 決算日までに発生しているが、支払いが翌期になる費用(例:月末締めの従業員給与、社会保険料、水道光熱費、月払い家賃など)は、未払費用として当期の損金に計上できます。
- □ 短期前払費用を活用する
- 家賃、保険料、リース料など、継続的なサービスで、翌期1年分までの費用を決算日までに支払い、一定の要件を満たせば、当期の損金として計上できる場合があります。(毎期継続適用が必要です)
- □ 必要な消耗品・備品を購入する
- 文房具、コピー用紙などの消耗品や、10万円未満の備品(パソコン、デスクなど)で、近々購入予定のものがあれば、期末までに購入し、事業の用に供することで当期の損金にできます。
- 【青色申告の中小企業等の特例】 30万円未満の減価償却資産であれば、年間合計300万円まで一括で損金算入できる「少額減価償却資産の特例」も活用しましょう。
- □ 決算賞与を支給する
- 利益が出ている場合、従業員への決算賞与の支給を検討しましょう。損金算入するには、「決算日までに全対象従業員へ支給額を通知」し、「決算日の翌日から1ヶ月以内に支払う」などの要件を満たす必要があります。
- □ 中小企業向け税制優遇措置を活用する
- 設備投資を行った場合などに、税額控除や特別償却を受けられる制度があります。代表的なものに「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進税制」などがあります。(適用要件や対象設備が細かく定められているため、専門家への確認が必要です)
- ※税制は頻繁に改正されます。最新の情報をご確認ください。
- □ 不良債権を処理する
- 回収見込みのない売掛金や貸付金は、貸倒損失として損金算入できる場合があります。ただし、損金算入が認められるには厳しい要件があるため、慎重な判断が必要です。
- □ (次期に向けて)役員報酬を見直す
- 役員報酬は原則として期中の変更ができず、損金算入が認められません。しかし、当期の利益状況を踏まえ、来期の役員報酬額が適切か、事前に検討しておくことは重要です。
【決算前チェックリスト③】資金繰り・納税資金の準備
利益が出て納税が必要になる場合は、資金の準備も欠かせません。
- □ 納税額をシミュレーションする
- 概算利益に基づき、法人税、地方法人税、法人事業税、法人住民税、そして消費税の納税額がいくらになるか、おおよその金額を計算しましょう。
- □ 納税スケジュールを確認し、資金を確保する
- 法人税等は原則として決算日の翌日から2ヶ月以内に申告・納付が必要です。納税資金が不足しないよう、事前に確保しておきましょう。
- □ 資金繰り表を確認・見直す
- 決算後、納税や賞与の支払いなどで資金繰りが厳しくならないか、資金繰り表を確認・見直しましょう。必要であれば、早めに金融機関への相談も検討します。
【決算前チェックリスト④】決算書の「見栄え」も意識する
節税は重要ですが、過度な節税によって利益を圧縮しすぎると、金融機関からの評価が下がり、融資が受けにくくなる可能性もあります。
- □ 自己資本比率は適切か?
- 自己資本比率(自己資本 ÷ 総資本 × 100%)は、会社の財務安定性を示す重要な指標です。一般的に高いほど良いとされます。
- □ 債務超過になっていないか?
- 債務超過(負債総額が資産総額を上回る状態)は、融資審査などで非常に不利になります。必要であれば、経営者からの借入金を資本金に振り替える(DES:デット・エクイティ・スワップ)などの対策も検討します。
まとめ:決算対策は専門家への相談がカギ
決算前のチェック項目と対策について解説してきましたが、これらはあくまで一般的な内容です。最適な節税策や経営改善策は、会社の業種、規模、財務状況によって大きく異なります。
また、税法や特例措置は複雑で、専門的な知識がないと判断を誤るリスクもあります。
「自社に合った節税策を知りたい」 「決算書の数値を改善したい」 「資金繰りに不安がある」
このような悩みをお持ちの経営者様は、決算を迎える前に、一度 香川県の税理士事務所に相談 してみることを強くおすすめします。
信頼できる税理士は、決算書の作成や税務申告だけでなく、経営者の良きパートナーとして、節税対策、資金繰り改善、経営計画の策定など、多岐にわたるサポートを提供してくれます。自社だけで抱え込まず、専門家の知見を活用することが、会社の持続的な成長につながるはずです。