個人事業主としてネットショップやオンラインサービスを提供する際、避けて通れないのが「特定商取引法に基づく表記」です。法律で住所の公開が義務付けられているものの、自宅住所をそのまま晒すのは抵抗がある――そんな悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。
実は、法律を守りながらも住所バレのリスクを最小限に抑える方法が存在します。今回は、個人事業主が知っておくべき特定商取引法の正しい表記方法と、プライバシーを守るための実践的な対策について解説します。
特定商取引法とは何か

特定商取引法(特商法)は、消費者を守るために制定された法律で、インターネット通販などの取引において事業者が守るべきルールを定めています。
この法律により、ネット上で商品やサービスを販売する事業者は、以下の情報を明記することが義務付けられています。
特定商取引法で表記が必要な項目
- 事業者の名称(氏名または法人名)
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 販売価格
- 送料などの付帯費用
- 代金の支払時期・方法
- 商品の引渡時期
- 返品・交換に関する事項
この中でも特にプライバシーに関わるのが「住所」と「電話番号」です。
住所の表記は必須なのか
結論から言えば、住所の表記は法律上必須です。ただし、いくつかの例外と工夫できる余地があります。
請求があった場合に遅滞なく開示する方法
特定商取引法では、一定の条件下で住所を最初から表示せず、「請求があれば遅滞なく開示する」という方法が認められています。
ただし、この方法を選択できるのは以下の条件を満たす場合のみです。
- 継続的に取引を行っている
- 過去に法令違反がない
- 適切な顧客対応体制が整っている
実際には、この方法は解釈が難しく、また顧客からの信頼性を損なう可能性もあるため、あまり推奨されません。むしろ、後述する別の方法でプライバシーを守る方が現実的です。
住所バレを防ぐ4つの方法
1. バーチャルオフィスの利用
最も一般的で効果的な方法がバーチャルオフィスの利用です。月額数千円から利用でき、都心の一等地の住所を事業所として登録できます。
バーチャルオフィスのメリット
| メリット | 詳細 |
|---|---|
| プライバシー保護 | 自宅住所を公開する必要がない |
| 信頼性向上 | ビジネス街の住所が使える |
| 低コスト | 月額3,000円〜10,000円程度 |
| 郵便物転送 | ビジネス郵便の管理が可能 |
ただし、バーチャルオフィスを選ぶ際は、法人登記が可能か、運営会社の信頼性はどうかなど、しっかり確認することが大切です。
信頼できるバーチャルオフィス
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2. レンタルオフィス・コワーキングスペースの利用
実際に作業スペースも必要な場合は、レンタルオフィスやコワーキングスペースの契約も選択肢です。バーチャルオフィスよりコストは高くなりますが、作業場所と住所の両方を確保できます。
3. 私書箱の活用
郵便局の私書箱サービスを利用する方法もあります。ただし、私書箱の住所表記については自治体によって解釈が異なる場合があるため、事前に確認が必要です。
4. 実家や親族の住所を借りる
実家が持ち家で、家族の了承が得られる場合は、実家の住所を事業所として登録する方法もあります。ただし、郵便物の管理や万が一のトラブル時の対応など、家族に迷惑をかける可能性を十分に考慮しましょう。
住所表記の具体例
特定商取引法に基づく表記では、住所をどのように記載すべきでしょうか。
適切な表記例
個人事業主の場合
事業者名:山田太郎(屋号:○○ショップ)
所在地:〒100-0001 東京都千代田区千代田1-1-1 ○○ビル3階
電話番号:03-1234-5678
メールアドレス:info@example.com
バーチャルオフィス利用の場合
事業者名:山田太郎
所在地:〒150-0001 東京都渋谷区神宮前1-1-1 △△ビル5階
(バーチャルオフィス利用)
電話番号:050-1234-5678
メールアドレス:contact@example.com
バーチャルオフィスを利用している場合、その旨を明記することで透明性を保つことができます。
電話番号の取り扱い
住所だけでなく、電話番号も特定商取引法で表記が義務付けられています。しかし、こちらも工夫次第でプライバシーを守ることができます。
IP電話・050番号の活用
固定電話を引く必要はなく、IP電話や050から始まる番号でも問題ありません。スマートフォンアプリで簡単に取得できるサービスも多く、プライベートの携帯電話番号を公開せずに済みます。
電話代行サービス
バーチャルオフィスの多くは、電話代行サービスも提供しています。専用の電話番号を持ち、オペレーターが代わりに電話対応してくれるため、プライバシーを守りながらプロフェッショナルな対応が可能です。
よくある質問と注意点
Q: バーチャルオフィスの住所を使うのは違法ではないか?
A: 違法ではありません。バーチャルオフィスの住所も正式な事業所所在地として認められています。ただし、法人登記や許認可が必要な業種の場合は、事前に確認が必要です。
Q: マンション名や部屋番号は省略できるか?
A: 特定商取引法上は、建物名や部屋番号まで正確に記載する必要があります。省略すると法律違反となる可能性があるため注意しましょう。
Q: 住所を虚偽記載したらどうなるか?
A: 虚偽の住所を記載することは特定商取引法違反となり、業務改善指示や業務停止命令、最悪の場合は刑事罰の対象となります。絶対に避けましょう。
Q: 引っ越した場合はすぐに変更が必要か?
A: はい、住所変更があった場合は速やかにウェブサイト上の表記を更新する必要があります。古い住所のままにしておくと、これも法律違反となる可能性があります。
プライバシーを守りながら信頼されるビジネスを
特定商取引法を遵守しながらプライバシーを守ることは、決して矛盾するものではありません。バーチャルオフィスやIP電話などのサービスを適切に活用することで、安全にビジネスを展開できます。
大切なのは、法律を正しく理解し、適切な方法でプライバシー保護と法令遵守を両立させることです。住所を隠すために虚偽の情報を記載するのではなく、正当な方法でリスクを最小限に抑えましょう。
これから個人事業を始める方、すでに事業を運営しているものの住所公開に不安を感じている方は、ぜひこの記事を参考に、自分に合った対策を検討してみてください。安心してビジネスに集中できる環境を整えることが、事業成功への第一歩となるはずです。